
Hog Johnson アパレル開発プロジェクト
Share
文:牟田口崇 / 写真:鈴木利岳
”ホグジョンソン。それは川の主だ。
その川で一番よく餌を食べ、一番大きく育った魚。僕たちは、そんなホグジョンソンを求めて旅に出る。
旅というのは、できるだけ荷物を少なくするのがいい。多用途に使えて、壊れにくく、もし壊れても直せるもの。それは釣具でも衣類でも同じことだと思う。僕たちは、そういうシンプルなものを好む。
じゃあ、僕たちが求める服ってどんなものだろう?
ウェーダーの下に着ても快適で、紫外線や虫から肌を守ってくれる。それに、濡れることを気にしなくていい速乾性も必要だ。でも、それだけじゃない。ただの「実用的な服」ならどこにでもある。僕たちが言う「多用途」というのは、釣り場で酷使できるだけじゃなくて、そのまま山を降りてバーでビールを飲んだり、空港のセキュリティをサラリと通り抜けたり、そんなふうにどんな場面にも自然と馴染むことを指している。
さらに重要なのは、時間の流れに左右されないことだ。
10年後、同じ服を着て旅に出られる。誰かに譲っても、「これ、いいね」と言ってもらえる。そんなタイムレスでシンプルな服。それが僕たちが作りたい服だ。
僕たちはそういう服を通じて、ホグジョンソンを追いかける旅をより自由なものにしたいと思っている。”
これは、ホグジョンソンのアパレルを作る際に最初に考えたコンセプトだ。
僕はこれまで、釣り業界やアウトドア業界で働いてきた。
だけど、釣り用として作られた服には、いつの間にかあまり興味を持てなくなっていた。
例えば、釣り用のシャツといえば――
ポケットがたくさんあり、D管が付いていて、速乾性が高く、魚に見つかりにくい色をしている。
でも、本当にそれが釣りに着ていきたい服なのだろうか?
僕には、それが「釣り用のシャツ感」を出すための演出にしか思えなかった。
ポケットもD管も、ヒップパックやベストに付いている。
むしろ、シャツにポケットが多すぎると、それらと干渉してしまう。
魚に見つかりやすかろうが、僕は好きな色の服を着たい。
速乾性は必要だけど、究極に速く乾くものを求めているわけではない。
もちろん、僕らの作る服にもポケットを付けるし、場合によってはD管を付けることもあるかもしれない。
でも、それは「釣り用のシャツらしさ」を演出するためではなく、本当に必要だから付けたいのだ。
Hog Johnson アパレルチーム開発チーム
そんな偉そうなことを言っている僕らだが、僕らにはデザインのスキルはなく、実現するには思いを形にしてくれるデザイナーが必要だった。
そこで真っ先に頭に浮かんだのは、クライミングパンツブランド「4c」の原さん。 原さんとは、僕が前職のアウトドアブランド時代からの付き合いがある。
当時、原さんは販売やリペア部門のスタッフとして働きながら、自身のブランドを運営していた。
僕もYetinaという立ち上げたばかりのブランドを運営しつつ、二足の草鞋で働いていて、当時、原さんにデザインを依頼したYetinaのパンツは、7年以上経った現在でも売れ続ける定番になっている。
「ホグジョンソンのアパレルを立ち上げるにあたり、共通言語で話せるデザイナーが必要で、原さんにその役割を担ってほしい!」と相談したところ、快く引き受けてくれた。
こうして、ホグジョンソンのアパレルプロジェクトはスタートを切ることができた。
実際にプロジェクトを進めていくと、化繊と天然繊維に関する考え方、旅への感覚、シンプルで長持ちする製品へのこだわり、釣りの動きを妨げないパターンの作成など原さんと僕らは、向いている方向が同じだった。
原さんはクライミング、僕らはフライフィッシングとジャンルこそ違うが、本質的な部分で必要とされる服には共通点が多い。
現在、試作は最終段階に入っている。
この後、最終サンプルを携え、約1ヶ月ニュージーランドを訪れる予定だ。
現地で製品を仕上げ、3月下旬ごろの発表、5月下旬ごろのデリバリー開始を目指している。
ホグジョンソンチームが考えるアパレルに、ぜひご期待ください。